よい子のための地学教室

よいこのみなさーん。
今日は皆さんが立っている陸が、とっても長い年月をかけて動いているお話をしましょうね。

1912年、ドイツ人の気象学者ウェーゲナーという人が南アメリカ大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸が奇妙に一致するのに気づきました。
それで両方の地質や動植物を調べると、元々一つであったものが分かれていったと考えれば、すべてつじつまが合うと考えたんですね。
それでこの発見を学会に発表したんですが、あんまり信じてもらえなかったんです。


当時、今皆さんが使っている Google Earth があり、この海底図形を見れば誰もが容易に納得したことだったのにね。
ほれ、分かれた海の底に元あった場所のあとがついてるでしょ。ここは大西洋中央海嶺と云う割れ目で、地面の底から溶岩が吹き出して海底を新しく作っている所なんです。それが左右に広がってゆくから陸が離れてゆくんだね。

なべちゃん

先生、質問です。これは人工衛星から撮った写真だから陸地が写るのはわかるんだけど、どうして海の底まで写っているんですか?

い〜いところに気がついたね〜。
実はね、海面は何処でも一定の水位であると思うけど、、実は海底の低いところと高いところでは海面の高さが微妙に違うんだよ。たとえば日本海溝の海面はその周辺の海面と30メートル高さが違う。その高さの違いを測って表すと、こんな風に海底地形が見られるんだよ。
大西洋の海底を南北に貫く線状の部分は大西洋中央海嶺という、プレートが作られている部分でね、これを境に両側にプレートが移動してゆく。まさにこの部分から南アメリカ大陸とアフリカ大陸が分裂していったのさ。

しらちゃん

先生。プレートって何ですか?

プレートっていうのはね、地球を半熟のゆで卵としたら、外側に殻があるんだけど、その殻がいくつかに割れていてあっちこっちに動いているのさ。そのひび割れた殻をプレートと呼んでいるんだよ。
実際地球ってのは半熟卵に似ているんだよ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9


あこちゃん

先生、こないだお母さんと一緒に「日本沈没」っていう映画を見たんだけど、そのプレートっていうのが日本の下に沈み込んでいって、大地震が起きて日本が海の中に沈んでしまうという映画で、わたし、怖くなってお母さんに「本当に沈むの?」って訊いたらお母さんが「あんなの嘘に決まってるしょ。」って言ったんで、すこし安心したんだよ。

そうだね。
沈没するにしてもみんなが生きている間は沈まないと思うよ。
チリのイースター島からアメリカのカルフォルニア半島にかけて生まれた太平洋プレートって云うのが、日本海溝って云う所に向かって2億年かけて旅をしてくる。日本海溝では海洋プレートが40度から50度の角度で斜めに沈み込んでゆくんだけど、地下100KMくらいまで沈み込むと、海洋プレートに含まれていた水が高温高圧のために陸地のプレートの下にあるマントルに逃げ出してゆく。マントルって云うのはかんらん岩という石で出来てるんだけど、水のために融点って云う、ものの熔ける温度が下がってかんらん岩が熔け出し、どろどろに溶けたマグマだまりというのを作る。それが地殻の割れ目を上昇して地上に吹き出し火山が出来る。

だから海溝の縁には海溝に沿って火山列島が出来るんだよ。
日本列島もそうやって出来たんだけど、海洋プレートには海山とか堆積物が溜まっているからそれが海溝に溜まってゆく。
これを付加体と言うんだけど陸地に乗り上げてくるときもある。
皆さんは秋吉台って知ってますか?
山口県というところにあるんですけどカルスト地形といって石灰岩の地層に雨水がしみ込んで大きな洞窟を作っています。
この石灰岩というのは元は珊瑚虫という生き物の外骨格で、海の中に珊瑚の島を作って魚の住処になっている。
この秋吉台の石灰岩の地質も元は遠くから運ばれてきた珊瑚礁だと思われます。
天皇海山列という海の中にある山が日本列島に近づいてきています。ですから逆に日本は大きくなるのかもしれませんよ。
あるいは海溝がジャンプして別の所に移動してしまうこともあるかもしれません。

純平ちゃん

先生、海溝ってどうやってジャンプするんですか?
僕も跳び箱うまく飛べるようになりたい。

付加体が沢山溜まると海洋プレートが沈み込むのに抵抗が大きくなって、海溝が海側に移動することがあるみたいだよ。
たとえば今から一億五千万年前には道南から東北の北上に渡って海溝があったらしいんだよ。
だから日高山脈の西側や北見山地に付加体の名残が溜まっている。
この位置に海溝があったときに海溝に沿って出来た島が、大韓航空機撃墜事件の時に話題になったモネロン島や礼文島なんだよ。

各プレートの移動方向


ちえみちゃん

先生、大陸の下に潜り込んでいったプレートは熔けてしまうんですか?

最近地震波を使って地下のマントルまでの状態をMRIみたいに見ることが出来る技術が発達して、地球の中を見たところ、日本列島の下に潜り込んだプレートがアジア大陸の、地下670KMの外部マントルと内部マントルの境目に溜まっていることがわかったんだよ。
溜まるだけ溜まると、ある時一気に地下2900KMの外部コアと内部マントルの境目近くまで落下してしまう。この落下が起こると地殻の部分もへこむんだよ。
そんなことが原因で出来たのが、タクラマカン砂漠のあるタリム盆地さ。
シルクロードの一部で、三蔵法師なんかもここを通って天竺に行ったんだよ。

これが地震波トモグラフィーの海溝の断面図だよ。赤い部分が温度の高いところ、青い部分は温度の低いところ、白点がプレートが海溝に沈み込む部分。
温度の低い海洋プレートが大陸の地下に貯まって居るでしょ。これをスラブというんだよ。

スラブの落下は地球の45億年という歴史の長さから考えると一瞬ともいえる時間らしいんだけどね。
これをコールドプルームって云うんだよ。「冷たい煙」って云う意味だけどね。そうするとホットプルームって云うのもあるんじゃないかと思うだろ?
あるんだよ。

マントルって云うのは前にも言ったようにかんらん岩で出来ている。
岩だから堅いと思うだろ?流れたりしないと思わないかい?
でも、ほら、氷河を考えてごらん。あんなに堅い氷でも流れて海に注ぎ込むじゃないか。
長い時間、力がかかると岩石も動いてゆくんだよ。
地球の中心は主に鉄の5000〜6000度くらいのコアで出来ている。
やかんに水を入れてストーブに乗せると対流が始まるだろ。
それと同じようにマントルもコアの熱でマントル対流というのが起こっているんだよ。

マントルの量は一定だからコールドプルームが起こるとその分マントルが上昇してゆく。
これをホットプルームって云うんだけど、時にはスーパープルームって云う大きなホットプルームが地殻に向かって上昇してゆくんだよ。ほとんどのホットプルームは地下670KMの外部マントルと内部マントルの境目にいったん滞留して、そこから上には滅多に出てこないんだけど、スーパープルームともなるとそこをさらに上に向かってゆく。地殻の下100kmから200km辺り迄来ると圧力が下がるので、岩石が熔けやすくなり、かんらん岩が部分的に熔け出し、マグマを作って周囲の岩石を溶かし込みながら地上に吹き出す。
アフリカの大地溝帯やポリネシアの火山活動はそれが原因なんだよ。
ハワイ諸島の場合はスーパープルームが分岐して地殻の下にホットスポットというものを作っている。
でもプレートは移動しているから吹き出し口が無くなって火山活動をやめて島だけが残る。
でもそのうち又,地殻の弱いところを見つけて火山活動が始まり、島が出来ると云うことを繰り返してハワイ諸島が出来たのさ。

左がスーパープルームの模式図で、右が地震波トモグラフィーを使ったアフリカ大地溝帯のマントルの断面図だよ。
赤い部分がスーパープルーム。これがアフリカを裂いている。左の図のメガリスというのは、おっこってきたプレートの板が外部コアの上300kmあたりに溜まっているんだよ。



これがね、アフリカの地殻の下のスーパープルームの3次元画像だよ。
スーパープルームの動きによって気候が変動して氷河が出来たり、プレートの出来る速度が変化したり、生物が絶滅したりするんだよ。
人間ってひ弱い存在だね。
自然の驚異の前ではなすすべもない。
でも、そのことに思いを馳せることが出来るのが人間のすごいところだね。


火山列を表示するとここが割れかかっているのがわかるだろ。この下にスーパープルームが潜んでいるんだ。


ゆっき

そうするとアフリカは将来は二つに分かれてしまうの?仲のいい人は早く一緒の場所に住んどいた方が良いね。


でもずっと先の話だからね。
でも、似たようなことが昔起こったんだよ。
ここが分かれ始める前、この一帯は豊かな森で、類人猿が木の上で暮らしてたんだけど、大地が裂け始めて東の方が乾燥して木が無くなってきたのさ。
それで仕方なく地面に暮らすようになったんで二足歩行をするようになり、人類の元になっていったんだよ。

かっちゃん

先生、僕はちえみちゃんと仲がよいので離ればなれになるのは嫌です。
僕は大人になったらちえみちゃんをお嫁さんにしたいと思います。

そうなると良いねえ。ちえみちゃんはどうなの?

ちえみちゃん

そんな先のことはわからないなあ。
でも先生、近いうちに東京に大地震が来るって聞いたんだけどほんとなの?

そういわれているね。
日本列島、特に関東周辺は太平洋プレート、ユーラシアプレート、北米プレート、フィリッピン海プレートの境界線の集まったところでプレート同士がせめぎ合っているから地震が多いのは当たり前なのさ。

        

左の地図を見ると新潟から富士山の辺りにかけてプレートの境界が走っているだろう?
これはフォッサマグナといって、大きな溝って云う意味なんだけど、右の写真を見ても低地になっているのがわかるだろ。
黒部トンネルは、このプレートが押し合って岩がぼろぼろになっている大破砕帯という所を掘ったんで、水が出たりして大変だったんだよ。

千秋ちゃん

先生、これを見ると私の前居た宮崎県は北海道と分かれてしまうんですか?

フォッサマグナから、くの字に折れてしまうことも考えられるね。
そうすると千秋ちゃんはユーラシアプレート方面の人ということになるかな。

くみちゃん

そしたら名古屋出身のあたしもユーラシアプレート方面の人かよ。仲間に入れてくれよ。
伊豆に住んでる人はフィリッピン方面の人になるのかえ?

まあ、今はみんな北アメリカプレート方面に住んでるんだから良いんでないの?
今日はこれくらいにしておきましょう。