純子、前方後円墳化する

ある日純子が前方後円墳になっているのに気がついた。
仁徳天皇陵などを見ると前方と後円の繋がる両脇に小さなふくらみがある。
純子もジーパンの腹の部分に左右にふくらみがはみ出ている。
それを純子に言うと

「な〜に言ってんの。これは愛嬌。完璧な女ってつまんないしょ?美人で、スタイルが良くて、料理が上手くて、こんな嫁いないよ。それともあんた何か文句があるのかい!?」

と言うので

「ございません。」

と言うしかない。

純子は顔が小さいから太ってもあまり目立たない。
足も綺麗でお尻も上がっているからジーンズが似合う。
ユニクロでジーンズを買って家の中でモデル歩きをするので

「似合うねえ、そろそろユニクロからモデルの依頼は来ないのかい?」

と言うと

「そうねえ、そろそろ声がかかると思うんだけど、ほら、私もスケジュールが詰まっているから。」

と言う。

「そうだよな、寅壱のニッカボッカーのモデルもしなきゃなんないしな。」

「寅壱」というのは作業服のメーカーで、鳶の間ではここのカラフルなニッカーボッカーがおしゃれなブランド品なのだ。

http://www.1up-uniform.com/kantotobi-4/pages/00-2.html

「おうっ!そうよ!なんせあたしゃ親方だよ。」

新しく来たバイトの子は純子を親方と呼んでいるのだ。

仕事柄温泉にも行けないので、家族風呂なら温泉気分を味わえると思い家族風呂に行った。
久方ぶりに純子の身体を離れた距離から眺めてみるとずいぶんと厚みを増した。
最近身体のラインが隠れるような服を着ていたから、中身がこんなになっているとは思いもしなかった。

「純ちゃん、そろそろミシュランからもモデルの依頼が来るかも知れないね。
タイヤの人形の方のさ。」

「あんた、死にたいのかい!」

といった会話が有り、純子もそれなりに太り始めたことを気にしているらしい。
一緒になった頃はすごく痩せていたのだ。

それである日ツリーチャイムに行ったら、悦子ママが夏の野外ライブまでに痩せようと企てていることを聞きつけた。
それを聞いた純子はめらめらと対抗心を燃やし始めた。

「私だけ置いてきぼりにされるのは嫌!」

と早速ダイエットを始めた。
本屋に行ってカロリーが低く、量は普通の料理の本を買ってきた。
それを一緒に食べている。
俺も又、少し危ない体重になりかけている。
ルビコン川を渡りかけており、これを越えると一気に行ってしまうのは経験上知っている。
4年前暑い夏が続き庭のトマトが豊作だった時は、食事は3食トマトだった。
これで一と月あまりで5キロ体重を落とした。
体調はとても良かった。
「トマトが赤くなると医者が青くなる。」という諺通りトマトは健康に良いようだ。

それで純子の体重がどうなったかというと、さっき量ったら1キロ痩せていた。
3日で1キロなら良い方では無かろうか。